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| 1 景 伊佐殿内の門前 | |
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旧暦3月の浜下りは、村の娘や若者たちが浜へ下りて遊ぶ日である。 この日を心待ちにしていた泊村の思鶴(うみつぃる)も乳母と連れ立って浜辺へ向かう。道すがらひとりの若者(阿嘉の樽金 たるかね)とすれ違った。いっしゅんふたりの視線が絡み合う。しかし言葉をかわせるはずもない。 |
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| 2 景 赤津浦の浜 | |
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| 浜辺で貝を拾う思鶴のとなりで、なにげなさを装った樽金が釣り糸をたれる。 しかし糸を見ていても、視線がつい思鶴に流れてしまうのだ。 |
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そんなことだから、手元が狂って釣り糸を思樽にひっかけてしまう。 「しまった!」 思鶴 「あね あんまあ ぬうやが、かしらぎゐに 掛かてぃヨー」(あっ、おカアサン、なにかが頭にかかっちゃったわ) |
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慌てて針をはずした乳母が糸の出所をたどっていくと、つい先刻、思鶴の後姿に視線を送っていたあの若者が立っていた。 乳母 「水のないところに魚がいるかね。魚釣りのフリして、人釣りして、どうするのかね!」 まったく、もう! と乳母はカンカン。 |
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樽金の謝罪に耳も貸さずになおも詰め寄ろうとする乳母を思鶴がたしなめる。「ひとぅぬ あやまちや 許るちやらし」(わざとじゃないんだもの。許してあげて) それでも樽金を遊び人だと思った乳母の気持ちは収まらない。帰りぎわにぎゅうっ、とひと睨み。 樽金の落胆は深い……。 |
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物思いに沈む樽金は、浜をとおりかかった船頭を呼びとめ、思鶴が住んでいる家を説明して、どういう人たちなのかと尋ねた。 |
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「あの家は泊の伊佐家で、家長は教養があってりっぱな方ですよ」 だがそれだけではない。 「あまぬ やあぬ ゐなぐんぐゎぬ かあぎぬ ちゅらさや さてぃさてぃ みじらし」 (あそこの娘の美しさは、めったにお目にかかれないほどです)」 |
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しかも、伊佐はしきたりのうるさい家柄。あなたの、想いが届くことはまずありません。 |
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成しば なにぐとぅん、 成るわざどぅ やしが 成らんち あちる、 ひとぅぬ 恨みしゃ (成せばなる何事も、とは申せども、そうはいかぬ人の世の 心はまことに切なさや) |
| 3 景 泊高橋・樽金の想い/4 景 伊佐殿内・樽金の恋文 |
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樽金は思鶴への想いを断ち切れず、伊佐家の近く、泊高橋の上で涙をこぼす。 とおりかかった思鶴の乳母が、悩みを聞いてやろうと声をかける。 「恥じかさん しみしょうらんぐとぅ 言ちちかしみしょうれ」 (恥ずかしがらないで、聞かせてごらんなさい) 傘をおろしてふり向いたのは、なんと釣り針で思鶴をひっかけたあの男だ。 「実は……思鶴が忘れられないのです」 |
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樽金は必死な思いで思鶴へあてた恋文を乳母に差し出す。 はじめは邪険に断った乳母だが、樽金の一途さに胸を打たれて文を受け取った。 乳母も、若い恋心にかぶれてはやる気持ちを抑えられない。急ぎ足で屋敷へ戻った。 |
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| ところが思鶴の反応は冷淡で、樽金なんか気にもかけてないといわんばかり。文に行灯の火を移すふりまでして、関心がないことを乳母に示すしまつ。 | ||
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なかば予期していたこととはいえ、乳母の報告は樽金を打ちのめした。 うゆばらんとぅみば うむい 増し かがみ 影やちょん 写ち 拝み欲しゃぬ |
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ところが思鶴は、乳母に見せた態度とは裏腹に、樽金への想いを押し殺していたのだ。 |
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